冬を乗り切る思考回路。

このところの寒気団は、太平洋側を中心に猛威を振るっているようですね。みなさんのところでは、積雪による被害はありませんか?

 

 

飛騨高山は、例年になく積雪のない年末年始を迎え、雪のないのを逆に心配していました。そして、ようやく飛騨らしい雪景色になったと思っていたら、この3日ほどでアレヨアレヨと言う間に80センチも積もってしまいました。

 

辺り一面、モノトーンの銀世界に包まれ、とても綺麗な景色が広がります。

 


しかし、塾生たちにとっては、慣れない雪の季節がやって来ました。塾までの雪道でスリップしないよう慎重に運転し、工房までの坂道でスタックした車をみんなで押し上げ、朝早くから工房周辺の除雪をしなければなりません。

 

積雪は1メートル以上、最低気温はマイナス15度を示す日もあります。雪が多くて寒くて、高山での木工修業は大変ですよね。


都会の人から見たら、さぞかし大変だと思うでしょうね。



雪国の生活が大変だったら、卒塾した塾生たちはサッサと他県へと去っていってしまうことでしょう。ところが、実に18%近い44名ものOBが、高山を中心とした飛騨エリアに住んでいるという事実は、いったい何を物語っているのでしょう?

 


高山から70キロほど離れた、合掌造りで有名な白川村は、積雪3〜5メートルにも達する豪雪地帯です。ここでは、トヨタ白川郷自然學校の校長・山田俊行さん(8期生)が家族で住んでいます

 

寒さでいったら、氷点下29度の極寒の地、北海道占冠村には敵いません。ここには、しもかぷ工房・代表の吉田耕一さん(11期生)とその家族、そして三輪耕太さん(19期生)が住んでいます。

 

最近では、SNSでOBたちの日常を垣間見ることができます。彼らには、厳しい冬を楽しむ余裕がありますね。

 


都会人に限らず、何事も便利な時代に生きている現代人の目から見たら、雪が多くて生活が大変。こんなに寒いところに住めるのだろうか?

 

という心配が先行してしまいますね。それは仕方がないことです。

 

雪国・飛騨高山は、高山線の開通する昭和9年までは、陸の孤島でした。ですから、長くて厳しい冬の生活を迎えるにあたって、あらかじめ段取りしておかなければ、それは生死に関わる問題になったそうです。

 

ですから、春先に摘んだ山菜は全て塩蔵や缶詰にしたり、秋に収穫した赤かぶや白菜を漬物にして保存するという生活の知恵が、雪国の文化として根付いているんでしょう。さすがに、飛騨高山も便利な時代になってしまいましたから、家では漬物なんて漬けないし、漬物なんてわざわざ食べないという若者も多いですけどね。

 

何がいいたいかというと、「将来起こりうる出来事をあらかじめ想定して事前に対策を打つことで、困難を回避して楽にやり過ごすことができる」ということです。雪国の人たちは、そうして長くて厳しい冬の暮らしを愉しんでいたんだと思います。

 


さて、たくみ塾に入塾する塾生たちも、最初は近視眼的な視野しか持ち合わせていません。一つが終わらないと次のことが考えられない直列思考ですし、イマだけ、ココだけ、ジブンだけの狭い視野でモノゴトを考える思考パターンが染み付いた塾生が大半です。(ですから、頭の柔らかいうちに木工修業を始めた方が、思考習慣は変えやすいのです)

残念ながら、これは現代人に共通の問題だと思いますよ。


それが、たくみ塾で木工修業を始めると、先々の●●のために、いま何をしておくべきか?と言う考え方が自然と身に付いてきます。身に付ける努力をしなければ、木工修業に付いてこれませんから。

モノづくりとは、同時に複数の工程を見ながら、常に先を読んで行なう作業だからです。

 


こうした見方が身に付いていない初級生は失敗も多いし、いつもスタッフに叱られています。

そして、雪が降ってから慌ててタイヤを交換しています。車の屋根に積もった雪も降ろさずに運転しています。暖気もせず、フロントガラスが曇ったまま運転しています。全て、その場しのぎのやっつけシゴト。起こってから対処していたのでは、大変なことですね。

 

 

こうした見方が身に付いてくると、木工がどんどん上手になってきます。スタッフに次の作業を指示される前に、先を読むことができるようになってきます。スタッフに代わって工程管理を任されるようになります。初級生に作業の指示を出していけるようになります。

そして、雪が降ると予想されたら、あらかじめ段取りしておくことができるようになります。慌てることがなくなり、余裕が生まれます。そして、雪を楽しむこともできるようになるんです。

 

一方で、モノの見方や考え方ではなく、木工技術だけを身に付けようと一生懸命頑張っている塾生もいます。そういう塾生は残念ながら、いつまでたっても木工が上手になる気配がないものです。

 


木工技術の基本」を学ぶだけでは身に付かないモノの見方や考え方。そうしたものが身につくことが、たくみ塾の「現場で学ぶ制作実習」の強みなんだと思います。

 

持続可能な社会を担う一員」として必要なモノの見方や考え方を、「制作実習」というモノづくりの現場で身に付けている。そして、木工技術がオマケで付いてくる。


極論ですが、たくみ塾の木工修業を、私はそれくらいに思っているのです。オマケの木工技術も、他の木工スクールに負けないものが身につくと、自負していますけどね。